MAX2010

Adobe MAX 2010レポート 3日目 Flash Media Serverの今とこれから

Adobe MAX 2010から「Adobe Flash Media Roadmap」のセッションレポートです。
アメリカのオンラインビデオサービスのTOP10のうち、9つはFlash Videoを採用しています。どのパソコンでも見ることができ、プレイヤーのカスタマイズも容易なので、ビデオを使ったコンテンツに必須のものになっています。今、Flash Mediaのサーバー関連技術はどのような状況で、今後どのように進化していくのでしょうか。

基調講演は7種類のストリームで配信

今回のMAXの基調講演は、世界中にストリーミング配信されました。日本からご覧になった方も多いと思います。ほとんどの方はPCのブラウザからご覧になったと思いますが、実は7種類のストリームで配信されていたようです。モバイルとタブレット向けに3つと、デスクトップ向けのSDとHD、テレビ向けのSDとHDで、計7種類です。すでにAdobe Media Encoder CS5には、タブレット、モバイル、デスクトップやテレビ向けの7つのプロファイルが追加され、マルチスクリーン時代への対応が進んでいます。

基調講演はP2P配信

Flash VideoのストリーミングにP2Pを使った方式があることをご存知ですか?アプリケーションレベルマルチキャストと呼ばれるこの方式は、ピアアシストネットワークを使うので配信コストもかかりません。実際、Adobe MAXのライブストリーミングでは、配信コストがかかっていないということです。あれだけの規模のライブストリーミングにも関わらず、配信コストがゼロというのは驚きですね。

配信の画面をよく見ると、In:314kbps, Out:190kbps, Buffers 4.0sec, Current Neighbors: 30と書いてあります。アップロード側の帯域もちゃんと使われていて、P2Pであることが分かります。

Flashのメディア関連技術・製品

ここで、Flashのメディア関連技術と製品を整理しておきましょう。
・ビデオエンコーディング
Adobe Media Encoder CS5、Flash Media Live Encoder 4
・ビデオの配信とコンテンツ保護
Flash Media Sever、Flash Access
・ビデオプレイヤーの開発
Open Source Media Framework(OSMF)、Flash Media Playback、Strobe Media Playback
・ビデオの再生
Flash Player、AIR
・再生可能なデバイス
Android、BlackBerry、Palm webOS、symbianなど

Flash Media Server 4の特徴

サーバーデプロイメント

・64bit対応。
・Windows Server 2008, CentOS 5.3, RHEL5をサポート
・DiffServ QoS制御(RTMP通信を優先度別に制御)

メディアエクスペリエンス

・HTTPダイナミックストリーミング(キャパシティ向上)
・マルチキャストフュージョン(品質向上、エンタープライズ向けビデオの低コスト配信)
・スマートバッファリング(バッファー内をシーク可能に)
・バッファーを活かした再接続(バッファーを使って再生を継続させながら裏で再接続する)
・高速なビットレートスイッチング(帯域の変化に応じてストリームを素早く切り替え)
・タイムコード(マルチストリーム間の同期のため、タイムコードを確実に挿入)

開発

・P2P(ピアアシストネットワーク)
・SpiderMonkey 1.8
・SIP連携(Flash Media Gatewayを使ってSIP準拠のエンドポイントから音声会議サービスと接続)

Flash Player 10.1が必須となるのは?

マルチキャスト、HTTPダイナミックストリーミング、ピアアシストネットワーク、Flash Access DRM、GPUアクセラレーションの各機能、およびモバイルとタブレットでの再生の際に、Flash Player 10.1は必須です。2010年9月の統計によると、日本におけるFlash Player 10.1の普及率は65.5%です。これは驚異的な普及の速さといえるでしょう。

Flash Platformの4つのマルチキャスト方式

ユニキャスト

昔からのクライアントサーバー型のストリーミング方式で、インターネットおよびイントラネット向けの配信に使われます。
特徴:
・HTTP/RTMPプロトコルでのダイナミックストリーミング
・最大の到達性
・リアルタイムのコンテンツ保護
・RTMPトンネリングオーバーHTTPも可能
それなりのサーバーも回線も必要で、比較的高価な配信になると思います。

IPマルチキャスト

UDPによるマルチキャストで、大企業イントラネットでの配信に向いています。
・UDPブロードキャスト
・ハードウェアのアシストが必要
・サーバー不要
・外部ネットワークへの到達性は限定的

アプリケーションレベルマルチキャスト

P2Pによるマルチキャストで、インターネットでの大規模ライブ配信に向いています。
・P2P
・フレキシブルで規模の拡張も容易
・特別なハードウェアは必要ない
・低コスト配信
・ランデブーサーバーが必要

Adobeマルチキャストフュージョン

ピアアシストによる、大企業のイントラネット向けの新しいストリーミング方式です。
・高品質の配信が可能
・到達性が高い
・ハードウェアとソフトウェアのアシストが必要
・ランデブーサーバーが必要

アドビ社内のマルチキャスト事例

サンフランシスコとサンノゼではフュージョン方式、他の国・地域ではP2Pマルチキャスト方式、VPN接続時やUDPが使えない環境ではユニキャスト方式をとっているそうです。

P2P配信の注意点

ユーザーには、Flash Player上にピアアシストネットワークのダイアログが表示されます。
・クライアントがサーバーに接続し、ピアグループに入ったときに表示される
・ユーザーにアップロード側の帯域を使用することを注意喚起するためのオプトインアプローチ
・サイトの完全なドメイン名がダイアログに表示される
・開発者は「拒否する」がクリックされたときに、他の配信方式に変更するような処理を用意しておくことができる

ピアアシストネットワークのダイアログ

マルチスクリーン時代に向けてFMSはどう進化するか

基調講演は7種類のデバイスに向けて配信したとお伝えしました。1つのストリームを7つのファイルで管理しているようでは、この先のデバイスの急増にとても対応できません。次のFlash Media Serverではこの問題を、7つのストリームを1つのファイルにすることで解決するようです。実は、今年のMAXの基調講演では、すでにこの新機能が試されていたようです。

ユニキャストからP2Pに切り替えるデモ


Unicast(RTMP)から、P2P(RTMFP)に切り替えたときのサーバーの帯域の変化を見せるデモ。当然ながら劇的に変化します。

P2Pで画像を共有するデモ


P2Pで、画像をクライアント間でリアルタイムに共有するデモ。動画配信だけでなく、データの共有にも使えます。マルチプレーヤーゲーム、ビデオチャット、メディア通信アプリケーションなどに応用すれば、帯域コストを抑えられ、可能性は無限だと思います。
セッションタイトルに反し、具体的なロードマップが明かされることはありませんでしたが、これからのFlash Media Serverは、「マルチスクリーン」「HTTP配信」「P2P」がコンセプトの中心となって、進化していくようです。
4種類の配信方式が用意され、コストを抑えながら、高いパフォーマンスの配信が行えるすばらしい時代になりました。
一方、映像配信以外の用途ではどうでしょう。MacromediaからFlash Communication Serverが登場したとき、これはマルチプレイヤーゲームに使えると思いました。しかし、規模を拡大しようとするとサーバーまわりのコストが極めて高くつきました。P2Pを使ったソリューションはそんな状況をも一変させる可能性を持っていると思います。


Author

  • Shuichi Ishikawa
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    Ishikawa
  • MikasaHideyuki
    Hideyuki MikasaHideyuki
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Shuichi Ishikawa
執行役員/インタラクションデザイングループ

フロントエンド開発からクラウドサーバー構築まで、新しいことに興味がありすぎて時間が足りない制作部門リーダー。Adobeインフルエンサー。九州芸術工科大学→ドリームキャスト→サーバーサイド→フロントエンド→執行役員→早稲田大学大学院→Kinect v2

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Hideyuki Mikasa
オーサリングエンジニア

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