
Adobe Senseiが幸せにするデザイナーの未来 ― Adobe MAX 2017基調講演レポート
2017.10.17

クリエイティビティ・カンファレンス「Adobe MAX 2017」が始まりました。基調講演では新しいソフトウェアや新機能の紹介も行われたのですが、最後に発表された少し未来のAIエンジン「Adobe Sensei」の紹介が衝撃的でした。
「これちょっと明日までに全部切り抜いといて、使わないかもしれないけど。」
「こないだの撮影データから、ちょっと顔がこっち向いているいい感じの写真みつけといて。背景はなんか宇宙っぽいやつで。明日までによろしくね。」
今この瞬間も、そういう大変な仕事をどこかのデザイナーが寝ずにやっているかもしれません。Adobeはこういうクリエイティブとはいえない作業はAIがやるべきと考えています。Webサイトやアプリのデザインに残っている単調で時間のかかる作業を、AIはどのように支援していくのか。まだ製品には搭載されていませんが、近い将来実現されそうなワークフローが紹介されました。
なお、Adobe Senseiは特定の製品名ではなく、裏側で人間の作業を支援するシステムの総称です。
ラフスケッチをAdobe Senseiが理解してくれる
ラフスケッチを書けば、Adobe Senseiがあなたの頭の中にあるイメージを理解しようとします。ここから支援が始まります。

こういうラフスケッチがあったとすると、Adobe Senseiは内容を分析して、構成要素に分解します。

Adobe Senseiは、「女性」「星」「宇宙」「宇宙船」「手」などがスケッチにあることを理解していますね。
画像素材は、構成要素ごとに調整できる

宇宙の画像といっても、その中には「大きめの星」「小さめの星」「星雲」など、さなざまざなものから構成されています。これを全部見て探すのは大変なのでAdobe Senseiが手伝います。例えば、星のサイズが密度などをスライダーで調整するだけで、イメージに合う写真だけをリストにしてくれます。
Adobe Senseiはすべての写真に何が写っているかだけではなくて、どんな感じで写っているのかも見ているのですね。
角度違いのモデル写真もAdobe Senseiがまとめて管理
撮影したモデルの写真も、まずはAdobe Senseiが構成要素を判定します。

顔、撮影用ライト、脚立など、写っているものすべてを理解しようとします。

顔の場合は例えばスライダーで向きを変えながら、撮影した写真の中から選べます。あらかじめ撮影データを向きの順に並べておくのはAdobe Senseiの役割です。顔の向きをベクトルとして分析しているわけですね。表情や、目線も解析できるようです。
Adobe Senseiが写真の切り抜きを行う
写真を合成するには切り抜きが必要です。ラフな切り抜きはAdobe Senseiに任せましょう。カンプ目的ならこれで十分です。

Adobe Senseiは、どんな写真のときはどこを切り抜けばいいのか学習して知っています。
突然「ごめんやっぱり女性じゃなくて男性モデルの写真にしたい」と言われたらどうしますか?Adobe Senseiにとっては、すべては想定の範囲内です。差し替えた上で切り抜きも行います。

Adobe Senseiがフォントを選んでくれる
Adobe Senseiは、あなたがこれまでに手掛けたデザインの傾向を全部学習しています。このようなポスターのときはどんなフォントを使うことが多いか知っていますので、おすすめフォントのリストを表示してくれます。デザイナーの好みや個性まで学習して支援しようというわけですね。

Adobe Senseiの判断は、コントロールできる
スケッチを理解することからモデル写真やフォントの選定に至るまでの過程は可視化されています(クリエイティブ・グラフ)。どの段階のどの要素も、コントロールできます。Adobe Senseiはすべてを自動で行うのではなく、人間が候補を絞り込むための直感的なパラメータを提示して、支援してくれるのです。

Adobe Senseiはデザイナーを裏側から支援してくれる

AIは人間の仕事を奪うのではないかという不安を抱く人もいるでしょう。しかし、発想する、想像するという作業はまさに人間にしかできないことです。Adobe Senseiが単調で時間のかかる作業を裏側から支援し、人は発想を具体化して仕上げる作業に集中できる。そういう未来をAdobeは思い描いているようです。
こんなにわくわくする未来があるでしょうか。
以上、現地ラスベガスよりお伝えしました。